韓国旅行記2
− ある質問 −

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 そして時は遅い。晩飯の時間である。明日は正午程度の飛行機だが、空港までの時間その他を考えると、会っている暇は無い。よって、会うのは今日が最終日。それでMFの提案で、少々酒でも飲みながら話しましょうという事になったのだ。
 が、なかなかよさそうな店が見つからない。MFの知っている店がことごとく閉まっているのである。そうして歩きまくった末に、高層ホテルの展望台レストラン(とでも言うのだろうか?)のバイキングディナーに行くことにした。

 店に入る。高層ホテルのちょいと高級目のレストランだけに、なかなかにハイソなお客様がたくさんいる。はっきり言って、私達の格好は場違いである(笑)。しかし、旅の恥はかき捨てである。ボーイに案内されるままに、どんどん中に入る。すると横で何かのお祝いをしていた。
「結婚式?(韓)」
「ちがう(日)、子供の*ヶ月(*ヶ年だったかも)のお祝い(英)」
との事。そういや中心に座ってたのは子供だった。
そして席につく。やはり案内された席は結構奥の方だった(笑)

 注文。とりあえずビールだが、MFはしきりにお金を気にしていた。大丈夫?大丈夫?と何回も聞いてきた。かかるお金は食べ放題の代金とビール。日本円に直すと、お好み焼き食い放題程度の金額なのだが、感覚価格がやはり違うらしい。日本でいうと、安目のホテルディナーといった所か。そしてMFの注文するままにビールは一つだけ。

 さて、バイキングに話を戻す。バイキング、という事は好きなだけ食べる事が出来る。という利点もあるが、それ以上にたくさんの種類の料理を食べる事が出来るという利点が素晴らしいのである。ここは外国。料理は当然違う。運がいいことに、このバイキングではアメリカン朝食の様な食事ではなく、韓国料理がふんだんに並べられているのである。ナイスである。
 そして当然の如く韓国の食べ物をあさりまくる。韓国料理だけではなく日本料理もあったので、日本との味の違いを確かめるために寿司とそばや刺身をもらってきた。
 で、その日本食の味だが、やはり日本の方が美味しい、というか、そばはのびているので問題外だし、刺身や寿司も、いわば作り置きだから、鮮度に問題あり。この状態で味を比べるのは韓国の料理人に悪いというものだ。
 さて、肝心の韓国料理だが、やはり肉系統がよろしい。カルビチム(カルビの蒸し物)がお気に入りになった逸品。それとソルロタン(豚か何かのしっぽで出汁をとったスープ)も気に入った。しっぽが面白い歯ごたえでよろしいのである。もちろん他の料理も美味しかったのだが、名前を忘れてしまったので省略。

 さて、そんなこんなで、日本と韓国の食べ物について話が盛り上がっていたのだが、そのうちそこから見える夜景がきれいだな、という話にいく。
 確かそこを流れていた河についてから派生したような記憶もある。けどやっぱりはっきりしてないのだけど、そんな話の途中、MFが不意に
「あの時、日本は本当に世界の王になろうとしていたの?(英)」
という質問をしてきた。びびった。
なにせ、相手は韓国の右翼の気配をみじんも感じさせない人である。そんな人にそんな質問をされるとは思ってもいなかったのだ。
 で、びびり続けている場合ではない。ここで沈黙してたら日本の恥である。私は『坂之上の雲』(司馬遼太郎の著した、日清日露戦争時代の長編小説)を読んで得ていた知識を総動員して答えた。
「あの頃はいろんな国が世界の王になろうとしてて、ロシアがその一つ。朝鮮半島がロシアに征服されたら日本にとって大変な事になる。日本は韓国に独立していて欲しかったけど、ロシアは強いし、いつも韓国を守っていた中国はアヘン戦争以来、諸外国から攻撃受けててその力はなかった。で、日本が韓国に進んだんだ。そして最初はそういう理由があったんだけど、そのうち軍が狂ってきて変になった。悲しい歴史だ(英)」
と。

 で、どんな風にして元の会話に戻ったのかも忘れてしまったのだが、それ以上の話はしなかった気がする。『坂之上の雲』を読んでいたからある程度答える事が出来たのだが、もしそれを読んでいなかったらきっと何も答えられずに終わったと思う。学校で、ここらへんだけでも教えておけばいいのに。これから必要になるかもしれないのに。

 そしてこのレストランでの話。
 私が、何皿めかの食べ物を取りに行っていた時、一人のボーイが話し掛けてきた。
当然の如くそんな普通に韓国語話されたら理解出来ない。そんな”何言ってるか解らないよ”オーラを出しまくった表情をしたのだが、相手はさらににこやかに流暢な韓国語で話し掛けてくる。この表情でこっちが韓国語解らない事を解らないのか?と思いつつ、
「ごめんなさい、韓国語よく解りません(韓)」
と答えると、びびっている。そして何も言わず横を通り過ぎていった。なんだったんだろう? なんか雰囲気的に、こっちが日本人だという事が解っていてわざと韓国語で話しかけ日本人が困惑している顔を楽しもう、という感じが見受けられた。
このレストランには日本人は来るはずだろうし。ちょっとした嫌がらせかな?
なんにせよ、帰りにレジに行った時は、私の横に来てレジのお姉さんが言った韓国語の値段を日本語にして言ってくれたのでよしとしよう。
今思えば、韓国語で簡単な事話しかけてみればよかった。ちょっと心残り。

 そして、レストランを出てから、散歩しながらお話をする。
 その時、前から二人連れの女性が歩いてきた。腕を組みながら。
「韓国の二人連れの女性って、腕組んで歩くんだね(英)」
「うん、ヨーロッパとかの人達は変に言うけど、韓国では普通の事。私も中学校の頃とかは友達と腕組んで歩いていたよ。もちろん、男は腕組んで歩いていたりしないけど(笑)(英)」
 噂には聞いていたが、失われた文化だと思っていた。けど、まだまだ残っている事を知って、なんか妙にうれしくなってしまった私だった。こういう文化はいつまでも残していって欲しいですね。

 そして、バスに乗り、地下鉄の駅に。そして握手してお別れしたのだった。
 色々な意味で興味深い一日、そして旅だった。来年も来るという事は無いと思うけど、もしまた韓国に行くことになったらソウル以外の場所にも行きたいですね。


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