韓国旅行記2日目その2

目次のページに戻る


 「昌慶宮(チャンキョンクン)」。に行くはずだったのだが、どうやら道にまよったらしい。こんなに歩く訳が無い。おそらく通り過ぎたのだろう。こういう時には冷静にならなくてはならない。辺りを見回す。大きい建物がある。そしてその入り口に人がいる。その人にとっては運の悪いことに私と目が合ってしまった。恨むなら自分の運の無さを恨んでね、と思いつつその人に近寄っていく。
안녕하십니까? 「アニョハシムニカ(こんにちは)」
 なんという話し出しだ。道聞くのにこんな挨拶する奴がいるか。
 そして、そのおやっさんが話し出す前に切り出す。
여기는 어디 입니까? 「ヨギヌンオディイムニカ?(ここはどこですか?)」
 地図を見せながら聞く。何が言いたいのかは否が応でも通じる。その人はしばし地図を見た後、
어디에가요. 「オディエカヨ?(どこに行くの?)」
 と聞いてきた。今でこそ訳しているが、この瞬間には頭の中で文章の思い出しが行われていた。よって相手は韓国語が解らない人間だと判断したらしく
「where?(どこへ?)」
 と聞き直してきた。この瞬間私の頭は韓国語モードから英語モードに切り替わってしまった。
 簡単な英語で受け答えをしたのはともかく、別れ際に「Thank you(ありがとう)」などと言ってしまった。最後ぐらい韓国語で締めれば良かったと次の瞬間後悔しまくる。日本語じゃないだけ良かったといえば良かったのだが。

 さて、おやっさんの道案内は素晴らしく、少し歩いただけで目的地についた。そして入場券売り場へ。やはり同様に3種類。私はこの時迷っていた。英語でやってしまおうか、と。なぜなら、さっきから何の発音修正も行われていない以上、また通じないのがオチなのである。
 そう思っていたのだが、前にいた見るからに英語圏の人々が同胞の友人に向かって
「choice(選べ)」
 と言っている。選ぶという事はさっきの私と同じように、二種類の券を出された(→言葉が通じてない)という事だ。英語が通じない券売り場だ。どうしようと迷っている間に、現地人親子が横から現れ、迷っている私を尻目に注文している。図々しい。
「オルンハナ**+P@@3##$$」
 !!!!!、ネイティブ韓国語なので、全部は聞き取れ無かったが、最初の言葉だけは聞き取れた。「オルン」。さっき私が失敗した「大人」の意の単語。

★韓国語には、カタカナで表記すると「ウ」「エ」「オ」になる母音が二つずつある。
ここで重要なのは「オ」だが、部品で言うと
の二つである。この場合は後者。
日本語の「オ」は韓国語のこの二つの「オ」の中間ぐらいの口の開き方で発音する。

 そうか、あんな感じの発音だな。実践だ。聞き取れ、さらにコツをつかんだ様な気がしてうれしかったせいもあり、大きな声で注文する。
어른 하나주세요. 「オルンハナチュセヨ!(大人一枚くれ!)」
 どうだ?さっきよりはネイティブに近い発音と思うが‥‥
 不安に思いながら券差し出し口に注目。
 ‥よっしゃぁあ!!!!!
 と心の中で叫ぶ。今度はちゃんと大人の券が一枚出てきたのだ。

 という事で、券をゲットし、意気揚々と宮殿に入ろうとすると、一人の職員に呼び止められた。
「ニホンジンデスカ?」
「ネー(そう)」
 ちょっと驚いた様子のそのおっちゃん。そしてまたもや怒涛のネイティブ韓国語を話される。だから、解んないんだってば。お約束で、こっちの韓国語力を見抜かれ(泣)、日本語で隣の宮殿について説明しはじめた。公務員による日本語のガイドがあって、その時間が12:40からだ、など色々説明してくれる。そして最後に
「ガクセイデスカ?」
아뇨 「アーニョ(違います)」
「ナンサイデスカ?」
 さてと‥‥自分の年齢の数字を韓国語になおす。その間、けげんそうな目で見守るおっちゃん。
이십오 「イーシプオー(25)」
ようやく出てくる。
이십오 「イーシプオー」
 ネイティブな発音で繰り返すおっちゃん。そしてそれで質問は終わりだった。宮内に進む時、そのおっちゃんの方を振り返ってみたら、券もぎり場に座りながら、この上ない幸せそうな顔で佇んでいたのだった(いやマジで)。

 韓国の人は韓国語で話しかけるととても喜ぶという話は聞いたことがあるが、もしそうなら、多分これが初めての体験となる。


2日目その3へ 目次のページに戻る